熊野懐紙


後鳥羽上皇は、譲位の後、二八回熊野に参詣するが、その途上、所々の王子社において法楽供養と旅情の慰めのために歌会を催した。歌会に参加した人々が自詠の歌を書いて差出した和歌懐紙が、「熊野懐紙」である。各歌会での懐紙は、上皇真筆を筆頭につなぎ合わせて一巻となし、裏面に上皇が歌会の催された場所と年月日を記すのが通例である。しかし現存する熊野懐紙は一枚ずつはずされ掛軸に仕立て上げられているものが多い。