和歌山県は、教科書などによく取り上げられる「荘園(しょうえん)」の多い地域として知られています。荘園とは、古代から中世にかけて、貴族や大寺社の私有地から発展した地域社会の単位ですが、とくに紀北の紀の川流域や紀中・紀南の海岸沿い地域では、高野山・熊野三山などの寺社勢力や、摂関家などの貴族勢力が領有する荘園が多く存在し、地元で勢力を伸ばす武士団や百姓とのせめぎ合いを繰り返しながら、独特の世界を作り上げていました。

 一方、荘園は、中学・高校の教科書で必ず取り上げられながらも、きわめて難解で教えにくい項目だという声がよく聞かれます。この企画展では、荘園の成り立ちや仕組み、さらには武士団や百姓による領有・開発をめぐる争いなどの様相が分かる資料を、できるだけ具体的に、分かりやすく展示し、当時の荘園の世界の実態をご紹介します。

 また、本企画展では、日本の荘園史・民衆史研究の先駆者として知られる和歌山県かつらぎ町出身の歴史家・西岡虎之助(にしおかとらのすけ)に関する資料もあわせて展示します。

 

***  見 ど こ ろ  ***

(1)中世のお百姓さんのナマの声が聞こえますか?

14世紀の末、高野山領の荘園だった官省符荘(現在のかつらぎ町・橋本市など)の百姓たちは、領主の代官を務める武士たちの横暴を訴える訴状を書きました。百姓自身の手によって書かれたこの訴状から、中世の荘園の実態に迫ります。

(2)超有名なカセ田荘の絵図。地元に残されたもう一枚の絵図は何故作られた?

ほとんどの中学・高校教科書に写真が掲載されているカセ田荘の絵図。これとよく似たもう一枚の絵図が、地元に残されていますが、この絵図には後世の「改変」の痕跡があります。何故そのようなことをしたのでしょう? 絵図の作成と利用の実態から、その点に迫ります。

(3)「荘園」研究の偉大な先駆者は、和歌山出身だった!!

大正から戦前期にかけて、歴史と言えば武将や政治家の活動を中心に描かれていた時代にあって、歴史を生きた「庶民」に光を当て、荘園の実態を解明する研究を次々と発表した和歌山県かつらぎ町出身の歴史家・西岡虎之助の和歌山時代の足跡と、彼の荘園研究がもたらした遺産を振り返ります。


ミュージアム・トーク(学芸員による展示解説)

 621日(日)・27日(土) 75日(日)・11日(土)・19日(日)

7月5日以外は13時30分から14時30分まで。7月5日は15時から16時まで。
(申込不要/入館料必要)




  休館日     月曜日
                  (7月20日は開館し、翌21日を休館)  

  会 場    企画展示室 

  開館時間  9時30分〜17時
 
                 (入館は16時30分まで)   

  入館料      
  一般:280円(220円) 大学生:170円(140円)
 
 ※( )内は20名以上の団体料金                      

 高校生以下、65歳以上の高齢者、障害者の方および
 県内に在学中の外国人留学生・外国人就学生の方は無料

 

 

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