紀伊藩10代藩主の徳川治宝は、歴代の紀伊藩主の中で、最も文化や芸術に造詣が深く、みずから書や絵を制作しました。また、茶道や陶芸にも関心が高く、表千家の家元や京都の有名な陶工などを招いて、別邸・西浜御殿の偕楽園という庭でやきものを焼かせたほどです。この絵は、その治宝が描いた絵で、おめでたい牡丹の花と孔雀の家族を細かい筆使いで表現しています。同じころ、当時流行した南蘋画風という中国風の絵を描いた森蘭斎という画家が、紀伊藩主の注文で孔雀の絵を描いたようなので、この絵にもそうした作品からの影響が考えられるでしょう。
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