出 陳 品 紹 介

 重要文化財 太刀 銘 安綱 附 糸巻太刀拵  紀州東照宮蔵

 安綱(やすつな)が作った太刀(たち)とそのかざり

 徳川家康が使っていたとされる太刀で、刀身は平安時代後期に伯耆国(現在の鳥取県)で活躍した安綱という刀工が作りました。紀伊藩初代藩主の徳川頼宣が父・家康の遺品として受け継ぎ、家康が亡くなって50年目の寛文5年(1665)に紀州東照宮へ奉納したものです。

 

 牡丹孔雀図 徳川治宝筆  長保寺蔵

 徳川治宝(とくがわはるとみ)が描いた牡丹(ぼたん)と孔雀(くじゃく)の絵

 紀伊藩10代藩主の徳川治宝は、歴代の紀伊藩主の中で、最も文化や芸術に造詣が深く、みずから書や絵を制作しました。また、茶道や陶芸にも関心が高く、表千家の家元や京都の有名な陶工などを招いて、別邸・西浜御殿の偕楽園という庭でやきものを焼かせたほどです。この絵は、その治宝が描いた絵で、おめでたい牡丹の花と孔雀の家族を細かい筆使いで表現しています。同じころ、当時流行した南蘋画風という中国風の絵を描いた森蘭斎という画家が、紀伊藩主の注文で孔雀の絵を描いたようなので、この絵にもそうした作品からの影響が考えられるでしょう。

 

 染付鶴香合  個人蔵

 鶴(つる)の形をしたお香(こう)を入れる器(うつわ)

 白い地に青色で文様をあらわす染付の技法を用いたやきもの製の器です。鶴がうずくまった形をしており、底には鶴の脚もあらわされています。箱書によると、紀伊藩10代藩主の治宝の遺品として分けられたもののようで、中国製のやきものであることも書かれています。器の内側には「道光年製」という中国・清時代の道光という年号があります。紀伊藩主が愛用した中国製のやきものとして貴重で、今回初めての公開となります。