展示のみどころ


知って納得! 文化財の収納法

 

600年前の国宝の収納法

 熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)の神々のために明徳元年(1390)に奉納された「古神宝類(こしんぽうるい)」は、約1000点全てが国宝に指定されています。これらは、唐櫃(からびつ)という足つきの高床式の箱をはじめ、何重もの箱や包みに収納して守ることで、残されたともいえるでしょう。約600年前の収納法を今に伝える貴重な文化財です。

 

徳川家康が使った遺品 

 紀伊藩初代藩主の徳川頼宣(よりのぶ)(1602~71)は、徳川家康(いえやす)(1542~1616)の十男です。家康が亡くなったときに譲り受けた家康の遺品を、和歌浦に建てた紀州東照宮(きしゅうとうしょうぐう)という家康をまつる神社へ奉納しています。家康の遺品は、頼宣や紀伊藩にとって重要であったため、華麗な箱や包みに収納して、大切に伝えられました。複数の箱や華麗な箱に収納することで、中の文化財の貴重さを示す意味もありました。

 

火災から守った箱!

 和歌山市吹上の報恩寺(ほうおんじ)には、紀伊藩初代藩主の徳川頼宣(よりのぶ)の妻である瑤林院(ようりんいん)(1601~66)が使ったという楽箏(がくそう)(琴(こと))があります。報恩寺は、かつて火災にあっており、この楽箏の箱には、焦げたあとが残されていますが、中の楽箏自体はほとんど傷んでいません。箱が火災から楽箏を守ったのです。

 

紐の結び方は、防犯装置?

 茶道具(ちゃどうぐ)の箱や包みでは、紐(ひも)の結び方などが細かく決められています。これは、しっかりと結べるという安全性から決められたという面もありましたが、紐の結び方を決めておくと、それを知らない部外者が箱を開けたかどうかがすぐにわかるという、防犯装置の機能も果たしていたといえるでしょう。

 

保護するための箱、伝えるための箱書

 箱には、大きく二つの役割があります。一つは、外的な衝撃や温湿度の変化から、中の文化財を保護することです。もう一つは、箱書(はこがき)によって、中の文化財の貴重さや大切さを伝えるという役割です。持ち主の大切にしようという思いに訴えることで、文化財を守り伝えたのです。

 

知っていますか? 収納法には意味がある!

 箱や包みの中に入れる文化財の収納法にも、さまざまな工夫があります。たとえば、掛軸(かけじく)や巻物(まきもの)や屏風(びょうぶ)は、大切な部分を内側にして収納することで保護し、コンパクトに収納できました。また、古い本は立たないので平積みして本箱や帙(ちつ)に入れ、着物はしわにならないよう縫(ぬ)い目(め)で折(お)り畳(たた)みました。