展示のみどころ


 

【みどころ1】 奈良時代の写経 重要文化財 蘇悉地羯羅経(そしつじからきょう)

高野山大学図書館が所蔵する聖教・古典籍のなかには、重要文化財に指定されている奈良時代の経典もあります。そのうちの一つが、蘇悉地羯羅経3巻です。そのうち巻下の巻末には、白で承保元年(1074)に寛智(かんち)が学僧の明算(めいざん)から伝受を受けたものであること、さらに朱で天仁元年(1108)に白河天皇の第五皇子である聖恵(しょうえ)法親王(ほっしんのう)が伝受したことなども記されています。様々な人々が伝受を受けて、伝えられてきた経典だったことがわかります。なお、展示では高野山大学図書館が所蔵する、もう一つの奈良時代の経典である大毘盧遮那成仏神変加持経(だいびるしゃなじょうぶつしんぺんかじきょう)10巻も展示します。


蘇悉地羯羅経 巻下 巻末(高野山大学図書館蔵(光明院文庫))



【みどころ2】 宇多法皇宸筆(しんぴつ)の草稿 胎蔵秘密略大軌(たいぞうひみつりゃくだいき)

 胎蔵界の灌頂(かんじょう)(密教(みっきょう)における伝受の儀礼)の次第を記したもので、朱の点や仮名などが全巻にわたって記されており、宇多法皇の宸筆とされます。宇多法皇は幼少時より仏教を篤く信仰し、昌泰2年(899)、京都の仁和寺で出家し、初めて法皇となったことでも知られる人物です。京都の東寺観智院(かんちいん)には清書本の「胎蔵秘密略大軌」2巻が所蔵され、この資料はその草稿本と位置づけられています。本文につけられた様々な記号など、非常に見どころ満載の資料です。


写真2 胎蔵秘密略大軌 (高野山大学図書館蔵(光明院文庫))

 

【参考】高野山大学図書館について

 現在の高野山大学図書館は、昭和4年(1929)に弘法大師一千百年御遠忌(ごおんき)記念事業の一環として建築されたもので、国の登録文化財に指定されています。蔵書数は30万冊を超えますが、そのうち約10万冊は高野山内外の寺院等から寄託・寄贈された古典籍・聖教類となっています。高野山にある寺院(子院(しいん)や塔頭(たっちゅう)とも呼びます)が持つ何千点もの典籍が蔵にあるままに寄贈・寄託されているところに大きな特徴があります。内容も、真言宗に限らず、日本史・国文学・国語学など多彩なものとなっています。この展示では、高野山大学図書館が誇る名宝を紹介します


写真3 高野山大学図書館の門