作品紹介


 

菩薩形坐像(ぼさつぎょうざぞう)
 
林ケ峰(はいがみね)観音寺(紀の川市平野)蔵
平安時代

 総高25.9㎝の小像で、桧の一木から像の全てを彫り出しています。神秘的かつ官能的な表情、豊かな量感と引き締まった肉身表現など、9世紀半ばごろの密教彫像特有の表現を示しています。
 類例の限られる優れた水準の初期密教彫像が新たに見出されるのは、全国的にも極めて珍しいことで、大きな発見です。
 平成24年1月、県立博物館と紀の川市教育委員会との合同調査で確認し、7月に紀の川市指定文化財となりました。今回が初公開です。


観音菩薩立像(かんのんぼさつりゅうぞう)
妙楽寺(橋本市東家)蔵
奈良~平安時代

  像高46.2㎝、桧とみられる一木から両手先を除く像の大半を彫り出しています。高く結い上げた髻(もとどり)、胴がくびれた健康的な体型、膝下の着衣に表された波打つような皺の表現など、奈良時代末期から平安時代初期ごろの特徴を示しています。紀の川流域に現存する、最古の木彫像です。平成24年6月、県立博物館と橋本市教育委員会との合同調査で確認し、今回が初公開です。


阿弥陀如来像(あみだにょらいぞう)および二十五菩薩像(ぼさつぞう)
法福寺(有田川町楠本)蔵
平安時代・江戸時代
和歌山県指定文化財

 阿弥陀如来が25体の菩薩とともに来迎(らいごう)している情景を、立体的な仏像で表現した群像です。阿弥陀如来坐像が平安時代前期、その他の菩薩像は平安時代後期に造像されたもので(一部は江戸時代の補作)、菩薩像は躍動的な動きや表情の変化に富んで魅力的です。こうした阿弥陀如来と菩薩の群像で、平安時代にさかのぼる作例は全国的にも極めて少なく、とても珍しい作例です。全ての像が寺外で公開されるのは、今回が初めてです。 


薄紅地松梅文様水干(うすべにじまつうめもんようすいかん)
金剛峯寺(高野町)蔵
享徳3年(1454)
重要文化財

 丹生都比売神社(天野社)で盛大に行われた舞楽法会のためにあつらえられた装束の一つです。狩衣(かりぎぬ)に似た装束で、丈が短く、裾を袴の中に着込めて着用します。
 上前の胸部分に梅枝、前裾に沢瀉
(おもだか)と水藻、背後は背中から両袖にかけて洲浜から生える松と梅の樹を大きく配し、腰には梅枝を、いずれも刺繡であらわしています。形にとらわれない自由でおおらかな色面の表現や技法などに、後の桃山時代の作例への志向を示します。制作時期の判明する、貴重な舞楽装束です。 


女神坐像(じょしんざぞう)
三谷薬師堂(かつらぎ町)蔵
鎌倉時代

 元、丹生酒殿神社に伝来した可能性が高い女神像で、丹生都比売命を表したものと考えられます。一具となる気比明神、厳島明神を表したと考えられる女神像も伝わります。まなじりを切り上げた口もとを引き結んだ意志的な表情をみせ、鎌倉時代初期頃の造像です。
 この3躯を詳細に調べると、本来は鋳造神像の木型として造像されたと考えられます。我が国に他に類例のない貴重な作例であり、高野山の歴史を考える上でも重要な情報を提供します。初公開です。