2月16日(土)〜3月16日(日)

 宗教が人々の生活に大きな影響を及ぼした前近代の社会において、僧侶は人々を救
済する宗教家としての一面をはじめ、学者として、あるいは文化・芸術に関わる知識人と
して、さまざまな側面を持って活動していました。高野山など数多くの寺院がある和歌山
県でも、日本の歴史に名を残した僧侶がたくさん輩出されています。
 この企画展では、和歌山県にゆかりのある僧侶の中から、日本密教の祖・弘法大師空
海とその師や弟子たち、華厳宗の僧・明恵上人、禅僧・法燈国師無本覚心にスポットを
あて、その肖像を展示します。総勢37人の肖像を通じて、描かれ刻まれた僧侶の姿が、
なぜ作られ、用いられ、伝えられてきたのか、その背景に迫りたいと思います。
企画展:高僧の姿―きのくにゆかりの僧侶たち―
会 期:平成20年2月16日(土)〜3月16日(日)
会 場:和歌山県立博物館 企画展示室
開館時間:9時30分〜17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
入館料:一 般:260円(210円)
     大学生:150円(120円)
※( )内は20名以上の団体料金、高校生以下、65歳
以上の高齢者、障害者の方、県内に在学中の外国人
留学生(外国人就学生も含む)は無料

絹本著色 弘法大師像 南北朝〜室町時代
遍照寺(紀美野町津川)蔵

 本像は、海草郡紀美野町津川の遍照寺本尊像とし
て伝えられてきたもので、今回が初公開。その姿は
「真如様」と呼ばれる図像をもとにし、上部に胎蔵界大
日如来、金剛界大日如来、千手観音、弁財天の
梵字が記されていることが特徴的です。高野山膝下で
は古い弘法大師像がほとんど確認されておらず、その
中では最古級の画像といえます。

 弘法大師空海(774〜835)は讃岐国の佐伯氏の出
身で、幼名を真魚といいます。僧侶となったのち山林
修行などを行い、のち遣唐使の一員として唐に渡りま
した。唐代密教の巨匠・恵果の弟子となり、密教の体
系を伝授され、大量の経典や仏画などを携え日本に
帰りました。嵯峨天皇の信任が厚く、東寺を賜り密教
寺院化するなど密教を一宗として確立し、修行道場と
しての高野山を開きました。書や文芸にも才能を発揮
しています。延喜21年(921)、醍醐天皇から「弘法大
師」の大師号が贈られています。

和歌山県指定文化財 法灯国師坐像
鎌倉時代  円満寺(有田市)蔵

 法灯国師の肖像は由良町興国寺に安置される重要文
化財の坐像が著名ですが、有田市円満寺に伝来した本
像は寺伝では興国寺像に先駈けて造られた試みの開
山像と言われています。禅僧の肖像を「頂相」といいます
が、和歌山県内では数少ない頂相彫刻の優品です。

 法灯国師無本覚心(1207〜1298)は、信州神林の出
身で俗姓は常澄氏。29歳で東大寺で受戒し、のち高野
山に登って伝法院覚仏や道範に密教を、禅定院行勇に
禅を学びました。建長元年(1249)、紀州由良より船を出
して中国・宋に渡り、護国仁王禅寺の無門慧開から禅の
教義を学びました。帰国後高野山禅定院(現金剛三昧
院)の首座となり、由良西方寺(現興国寺)の開山となり
ました。亀山・後宇多両上皇からの尊崇をうけ、亀山上
皇から法燈禅師号、後醍醐天皇より法燈円明国師号を
贈られています。

ミュージアムトーク(展示解説)を、3月2日(日)、3月16日(日)の午後1時30分から行います。


コラム 高僧の姿
コラムは全4回の連載です。2/22、2/29、3/7、3/13に更新します。

第1回 甕に描かれた高僧の姿―白浜町長寿寺の大甕―(2/22更新)
第2回 高僧の姿と高野山浄土―紀美野町遍照寺の弘法大師像―(2/29更新)
第3回 時空を伝える高僧の姿―弘法大師の弟子たちを描く―(3/7更新)
第4回 試みの開山像―円満寺の法燈国師坐像―(3/13更新)


展 示 資 料 目 録
1 理想的な僧侶の姿
十六羅漢像    
室町〜江戸時代
和歌山県立博物館 
十六羅漢像 
室町時代
浄教寺 
備前焼大甕
暦応5年(1342)
長寿寺
2 弘法大師とゆかりの高僧
弘法大師像    
南北朝〜室町時代
遍照寺
真言八祖像
(龍猛・龍智・金剛智・不空・善無畏・一行・恵果・空
海) 
室町時代
長保寺
弘法大師十大弟子及び真然・定誉像
(真済・真雅・実恵・道雄・円明・真如・杲隣・泰範・智
泉・忠延・真然・定誉)
江戸時代
個人蔵
地蔵院流道教方先師像
(真雅・源仁・聖宝・観賢・淳祐・元杲・仁海・成尊・義
範・勝覚・定海・元海・実運・勝賢・成賢・道教)
江戸時代
個人蔵
道教像
江戸時代
個人蔵
高祖大師秘密縁起
江戸時代
和歌山県立博物館
3 明恵上人
10
明恵上人像 
明暦4年(1658)
施無畏寺
11
○ 湯浅一門系図  
鎌倉時代
施無畏寺
12
○ 源頼朝書状写  
元暦元年(1184) 
施無畏寺
13
紀州所々遺跡   
江戸時代
歓喜寺
14
承久三年夢記 明恵筆  
承久3年(1221)
個人蔵
15
明恵上人樹上座禅像(複製) 
原品は鎌倉時代
現品は高山寺、複製は和歌山県立博物館
16
諾距羅尊者像(十六羅漢像のうち) 
室町時代
浄教寺
17
明恵上人五百五十回遠忌開帳絵図 
安永9年(1780)
施無畏寺
18
明恵上人五百五十回遠忌仏餉供養札版木
江戸時代
歓喜寺
4 法燈国師
19
○ 法燈国師坐像
鎌倉時代
円満寺
20
○ 法燈国師像  
鎌倉時代
円満寺
21
紀州由良鷲峯開山法燈円明国師之縁起   
永正15年(1518)
和歌山県立博物館
名称の前に「○」があるものは、和歌山県指定文化財です。