主な作品の紹介


 

太地浦鯨舟絵図(たいじうらくじらぶねえず)  1巻

紙本著色 縦30㎝ 横470㎝  江戸時代(19世紀) 太地町立くじらの博物館蔵

 米国・ニューべッドフォード捕鯨博物館に所蔵される「南海得鯨図絵(なんかいとくげいずえ)」(1冊、紙本著色、江戸時代)とならんで、鮮(あざ)やかに彩色されていたという太地の鯨舟の意匠を伝える貴重な資料である。太地鯨組の船団全ての鯨舟について、1艘(そう)ずつ描き、意匠などに関する注記が添えられている。かつて太地鯨組のなかで、鯨舟の彩色を世襲して担当した家に伝来した資料の可能性がある。

 

 鯨及捕鯨道具絵図(くじらおよびほげいどうぐえず)  1巻

紙本著色 縦30㎝ 横339㎝
江戸時代(19世紀) 太地町立くじらの博物館蔵

 前半に、銛(もり)や剣・網などの捕鯨に用いる道具が描かれ、詳細な注記が施されている。とくに、銛と鯨舟を結びつける銛綱(もりつな)の記載が詳しい。銛を打たれた鯨は、舟を曳(ひ)きながら逃げるため、衰弱が早まることから、銛綱にも重要な意味があった。後半には、11種類の鯨の図が描かれている。

 





 

紀州太地浦鯨大漁之図(きしゅうたいじうらくじらたいりょうのず)・鯨全体之図(くじらぜんたいのず)  1巻

紙本著色 縦30㎝ 横1309㎝
江戸時代 文久元年(1861) 太地町立くじらの博物館蔵

 巻頭の序文に続いて、11種類の鯨の図を描き、その後に、太地浜での鯨の陸揚(あ)げ・解体の様子、太地鯨組の中心的な役割を果たした和田家の屋敷の前を持左右舟(もっそうぶね)などによって曳航(えいこう)する様子、燈明崎(とうみょうざき)の沖合で座頭鯨(ざとうくじら)に網を掛ける様子、そして向島(むかいじま)の大納屋(おおなや)におけるさまざまな道具の製作の場面と、道具の図解と続く。とくに、向島での作業の様子を詳細に描いている部分については、他に類例がないため、非常に貴重である。

 

 鯨盃(げいはい)  3口   江戸時代~近代(19世紀) 個人蔵

漆工 (背美鯨)口径18.0㎝ 高さ5.6㎝   (座頭鯨)口径16.6㎝ 高さ4.6㎝
    (克鯨)口径15.3㎝ 高さ4.0㎝ 

 背美鯨(せみくじら)・座頭鯨(ざとうくじら)・克鯨(こくくじら)を、それぞれ大きさの順に表現した朱漆塗(しゅうるしぬり)の盃(さかずき)で、黒漆と朱漆の線で鯨を描き、波を金泥(きんでい)、波しぶきを銀泥で表現する。捕鯨の大漁祝などの宴で用いられたもの。