展示のみどころ


 

 Ⅰ きのくにの仏像と神像

平安時代前期(9~10世紀)に制作された像高101.2㎝に達する等身を超える神像。肩幅が広く胸板の厚い量感あふれる造形、背筋を伸ばした堂々とした姿勢は、表情と相まって雄偉な印象である。理想的な神の姿の造形化が成し遂げられる時期に制作されたもので、日本を代表する神像彫刻の傑作ともいわれる。

国宝
熊野速玉大神坐像
(くまのはやたまのおおかみざぞう)

 熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)蔵 [資料番号26]

 

 Ⅱ きのくに荘園の世界

江戸時代後期(19世紀)、現在の橋本市で刀剣や土器とともに発見されたとも伝えられる。背面に人物や騎馬像が彫られた鋳銅製の画像鏡で、中国製の画像鏡を手本に、日本で作られたとされている。「癸(みずのと)(ひつじ)年」に制作されたことが記されている。「癸未年」については、西暦443年説と503年説とが有力である。〔東京国立博物館寄託〕

国宝
人物画象鏡
(じんぶつがぞうきょう)

 隅田八幡神社(すだはちまんじんじゃ)蔵 [資料番号54]

 

 Ⅲ 国宝・熊野速玉大社の古神宝類

明徳元年(1390)に奉納された古神宝類の一つで、上着と肌着(はだぎ)の間に着る装束。文様を織り出した地に別の色糸で二重に文様を浮き上がらせる二重織(ふたえおり)という高度な技術が用いられている。熊野速玉大社の第一殿の社殿である結宮(むすびのみや)に祭られる夫須美大神(ふすみのおおかみ)(女性の神様)に奉納されたものと考えられている。

国宝
衵 萌黄小葵文浮線綾丸文二重織

(あこめ もえぎこあおいもんふせんりょうまるもんふたえおり)

 熊野速玉大社蔵 [資料番号92]

 

 Ⅳ 紀州東照宮の名宝

(かぶと)や胴、肩当(かたあて)はイタリア製、面頰(めんぽお)や脇当(わきあて)、草摺(くさずり)、兜(かぶと)のシコロ(革扁に每)は日本製である。胴の中央に鎬(しのぎ)を立てているのが特徴で、試し撃ちの跡がある。縦に長い兜には、人物や剣、甲冑(かっちゅう)などの模様が施され、腰まで覆う胴にはマンドリンや獅子、唐草文などが線刻されている。1570~80年ごろ北イタリアで制作されたとみられている。

重要文化財
南蛮象具足
(なんばんどうぐそく) 徳川家康所用

 紀州東照宮蔵 [資料番号120]

 

 Ⅴ 芦雪・応挙 紀南寺院の障壁画

12面のうち右4面に滝の傍らで眠る2頭の獅子、中央4面に立ち上がり目を剝(む)き毛を逆立てて怒気をあらわにする獅子(写真)、左4面にその獅子に駆け寄る二頭の獅子を描く。静と動の対比、斜線と垂直線を活かした幾何学(きかがく)的な構図が目を引く。紀南に残る芦雪(ろせつ)の作品は制作年代が明らかな点で重要。本図は天明6~7年(1786~87)の制作。

重要文化財
唐獅子図
(からじしず) 長沢芦雪筆

 成就寺蔵 [資料番号148]