木製五輪塔 (和歌山県教育委員会蔵)
五輪塔とは、一般的には、亡くなった人の供養のために造立する石造の供養塔のことをいい、下から、地・水・火・風・空輪の五つの部分からなるために、五輪塔と呼ばれる。地・水・火・風・空は、密教において、万物を造り出す元素とされ、中国からもたらされた思想を日本において独自に造形化したものと言われる。 この木製五輪塔は、根来寺旧境内の西に位置し、その防御を目的に造られたとされる西山城の東側の堀跡から出土したもので、全体の長さは19.0pを測る。西山城は、戦国時代の末期まで機能したと考えられているので、堀の機能が停止して以降、堀が埋没する過程で堆積した土砂の中から出土したこの遺物が使われていた時代は江戸時代以降ということになるが、この土砂の中には中世以前の遺物も含まれており、にわかに江戸時代の資料と判断するのは早計だろう。五輪塔じたいは近世に入ると急速に減少するので、むしろ、中世根来寺周辺の素朴な庶民信仰の遺物と考えられよう。
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