企画展



3月22日(土)〜4月20日(日)

 和泉山脈の麓、岩出市根来に位置する新義真言宗総本山・根来寺は、開祖・覚鑁上人が高野山上を離れて根来の地に下山して以来、衰退と復興を繰り返しながらも、一度も絶えることなく、現在にまでその法灯を受け継いできました。根来寺に関しては、昭和51(1976)年頃から、旧境内にあたる広い範囲で連続的に発掘調査が続けられ、その中世都市としての側面が具体的に明らかになる一方で、文献資料の不足から、根来寺を構成する個々の坊や院の具体的なあり方については、まだまだ未解明の点が多く残されています。
 この企画展では、個々の「坊」や「院」の銘が入った出土資料を中心にして、その関連資料や文献資料でそれを補いながら、坊や院家の活動の実態に迫りたいと思います。平成18(2006)年、根来寺境内は国の史跡に指定されましたが、この企画展により、ここに至るまでの発掘調査や研究の成果の一端を紹介できればと考えています。
企画展:根来寺の今と昔
会 期:平成20年3月22日(土)〜4月20日(日)
会 場:和歌山県立博物館 企画展示室
開館時間:9時30分〜17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
入館料:一 般:260円(210円)
     大学生:150円(120円)
※( )内は20名以上の団体料金、高校生以下、65歳
以上の高齢者、障害者の方、県内に在学中の外国人
留学生(外国人就学生も含む)は無料


鬼瓦
側銘「大くエチコせう ふちわらときよし」
戦国時代
和歌山県教育委員会蔵

 根来寺旧境内のうち、その有力な院家・延命院が
あったと考えられる区域内から出土した鬼瓦。側面
には「大くエチコせう ふちわらときよし」という陰刻
銘がある。「越後尉 藤原時吉」は根来寺大塔に葺
かれている瓦を制作した瓦大工集団で、延命院周
辺の建物でも大塔と同じ瓦大工集団によって制作さ
れた瓦が用いられていたことが分かる。根来寺院家
の富裕ぶりをうかがわせる資料。



朱漆塗椀
底銘「延命院」・「川大夫」
室町〜戦国時代
和歌山県教育委員会蔵

 根来寺旧境内のうち、蓮華谷と呼
ばれる谷筋の一角で出土した漆器の
断片。底裏に「延命院」「川大夫」の
銘が漆によって記されており、根来寺
の院家・延命院で用いられていたも
のであることが分かる。口縁部の外断
面を顕微鏡で観察すると、漆面の下
に布が貼られているのが分かり、布は
木綿である可能性がある。



田中打田村宮後田地売券
天文3(1534)年
極楽寺〈紀の川市上田井〉蔵

 近年、紀の川市上田井にある極楽寺
の天井裏から33通の中世文書が発見さ
れた。この文書群は主に土地などの売
買に際して取り交わされた証文類から
成るが、その中に根来寺延命院の泉秀
房など、根来寺の院家が売買に携わっ
た文書が多く含まれている。根来寺の院
家の経済活動の一端をうかがう重要な史
料である。


ミュージアムトーク(展示解説)を、3月22日(土)、4月5日(土)の午後13時30分から行います。
(申込みは不要です)

コラム 根来寺の今と昔
3/21、3/28、4/4、4/11、4/18に掲載予定です。
第1回 鬼瓦が語る往昔の根来寺(3/21更新)
第2回 よみがえった根来寺院家の名(3/28更新)
第3回 公権力としての根来寺を支えていたもの(4/4更新)
第4回 謎の記号が意味するもの(4/11更新)
第5回 根来寺僧侶の風雅で高尚な趣味(4/18更新)

展 示 資 料 目 録
T 秀吉の紀州攻めと根来寺
弘法大師像    
江戸時代
和歌山県立博物館 
興教大師像 
江戸時代
和歌山県立博物館 
太平記 巻十八
江戸時代
和歌山県立博物館
根来合戦記・舩上録
江戸時代
和歌山県立博物館
太閤記 第七
江戸時代
和歌山県立博物館
佐武伊賀働書(南紀徳川史 第五十三冊のうち)
明治34(1901)年
紀州東照宮
U 根来山内の院家
根来寺境内絵図    
江戸時代
和歌山県立博物館
極楽寺文書
極楽寺(紀の川市)
 田中常福寺某下地売券
享禄3(1530)年
 貞恒田地売券
天文2(1533)年
 東光寺栄順田地売券
天文2(1533)年
 田中打田村宮後田地売券
天文3(1534)年
 井坂中屋田地売券
天文3(1534)年
 為近田地売券
天文5(1536)年
 為近田地売券
天文5(1536)年
根来寺遺跡 広域農道谷部A地区SXー14
出土資料
和歌山県教育委員会
 朱漆塗椀 底銘「延命院」
 朱漆塗皿 底銘「川大夫」
室町〜戦国時代
 備前焼大甕 銘「□石入」・瓦燈
室町〜戦国時代
 瑠璃釉碗・ベトナム製白磁碗
中国・明時代
10
鬼瓦 側銘「大くエチコせう ふちわらときよし」
戦国時代
和歌山県教育委員会
11
根来寺遺跡 根来地区普通農道V-1地区
SB-01出土資料
岩出市教育委員会
 朱漆塗椀 底銘「理性院」
室町〜戦国時代
 白磁皿・白磁皿(菊皿)
中国・明時代
 瀬戸天目茶碗・備前焼擂鉢・備前焼三耳 壺・木製敷居・木製桶底板・鉄製鑿
室町〜戦国時代
極楽寺文書
極楽寺(紀の川市)
 菩提谷菊之坊勢伝田地売券
永正12(1515)年
 年正田地売券
大永2(1522)年
 俊正下地売券
天文元(1532)年
13
根来寺遺跡 岩出市民俗資料館建設用地SX-1001出土資料
岩出市教育委員会
 常滑焼甕・備前焼小壺・備前焼水屋甕・信 楽焼大壺
室町〜戦国時代
14
根来寺遺跡 岩出市民俗資料館建設用地SE-1001出土資料
岩出市教育委員会
 青花牡丹唐草文植木鉢
中国・元時代
 肥前系染付碗
江戸時代
 鳳凰文軒丸瓦
室町〜戦国時代
15
鉄釜
室町時代
岩出市教育委員会
16
朱漆塗椀 底銘「筒井坊」
室町〜戦国時代
岩出市教育委員会
17
根来寺遺跡 広域農道1977(昭和52)年度調査第V地区出土資料
和歌山県教育委員会
 青磁大鉢・白磁皿 底銘「天下太平」
 白磁皿 底銘「天文年造」
中国・元〜明時代
 青花片口鉢
中国・元時代
 高麗黒磁皿
朝鮮・李朝時代
V 院家のすがた―2002(平成14)年度調査岩出市内遺跡の発掘例から―
18
桶および内容物 
室町〜戦国時代
岩出市教育委員会
19
炭化穀物  
室町〜戦国時代
岩出市教育委員会
20
糸巻き・緡銭  
室町〜戦国時代 
岩出市教育委員会
21
陶磁器・土器類   
岩出市教育委員会
 白磁皿・青花草花文皿
中国・明時代
 瀬戸美濃天目茶碗・瓦質擂鉢・土師質皿・ 土師質壺・備前焼大甕
室町〜戦国時代
 青白磁八角杯
中国・明時代
22
青花竜唐草文碗  
中国・明時代
岩出市教育委員会
23
瓦 
岩出市教育委員会
三巴文軒丸瓦・唐草文軒平瓦・丸瓦・平瓦
室町〜戦国時代
W 根来大工・鳥羽家文書の世界
24
番匠作法授与書
寛永15(1638)年
和歌山県立博物館
25
番匠作法授与書  
延享2(1745)年
和歌山県立博物館
26
番匠秘伝書 
江戸時代
和歌山県立博物館