展 示 品 紹 介

ぶんおう・きりん・ほうおうず  いわいせんりゅうひつ
文王・麒麟・鳳凰図 岩井泉流筆


(岩井泉流が描いた
文王と麒麟と鳳凰の絵)
和歌山県立博物館蔵


 文王は、紀元前12世紀ごろ、中国の周王朝を築いた理想の君主です。この三つの絵の中央には、釣りをしていた賢人の太公望(呂尚)を文王が登用する場面が描かれています。右側には麒麟と松、左側には鳳凰と桐が配されており、どれも聖人や君主を意味するおめでたい植物や想像上の生物です。筆者の岩井泉流(1714〜72)は、江戸に住んだ紀伊藩のお抱え絵師で、江戸の狩野派に絵を学びました。


ありだぐんえず  おおえかがくひつ
有田郡絵図 大江霞岳筆

(大江霞岳が描いた有田郡の絵図)
和歌山県立博物館蔵


  江戸時代終わりの有田郡を描いた絵図です。村を色分けして示し、村の文字を囲む形によって、村が所属する組をあらわしています。主な道路や村の間の距離なども記した細かい絵図です。筆者の大江霞岳(?〜1850)は、紀伊藩10代藩主・徳川治宝〔とくがわはるとみ〕(1771〜1853)の右筆であった大江龍眠〔おおえりゅうみん〕(?〜1812)の弟で、京都の画家・小田海僊〔おだかいせん〕(1785〜1863)に絵を学びました。本格的な画家が、藩の支配にかかわるような絵図を描いている貴重な例です。


きんていこうさいろく
『欽定康済録』
りくそううちょ おだちゅうきょうこうてい
陸曾禹著 小田仲卿校訂


(小田仲卿が中国の政治の本を
あらためて出版したもの)
和歌山県立博物館蔵


 中国・清時代の陸曾禹という人物が書いた康済録という政治の本を、小田仲卿(生没年不詳)という紀伊藩士があらためて出版したものです。仲卿は名草郡の奉行をつとめたほどの人物ですが、中国の本に関する高い知識を持っていたことがわかります。この本の最初にある序文も紀伊藩の儒学者である山本東籬(1745〜1806)が書いており、出版にも紀伊藩がかかわっていたようです。