展示のみどころ


 

企画展 防ごう!文化財の盗難被害


 薬師如来坐像

 阿弥陀寺蔵 平安時代
かつらぎ町指定文化財
初公開


かつらぎ町教良寺の阿弥陀寺に伝来した仏像で、平安時代後期の洗練された作風を示します。嘉暦4年(1329)「僧西忍田地売券」(『又続宝簡集』)に登場する「教良寺薬師仏」や、観応3年(1352)「教良寺村人等田地売券」(『続宝簡集』)に記される「教良寺薬師堂」 の本尊像と判断され、教良寺村の信仰の中心的存在であったと考えられます。薬師堂廃絶ののちも、村の仏像は村内の寺院で継承されてきたのです。

 役行者坐像

 中津川行者堂(極楽寺)蔵
室町~江戸時代



 平成22年(2010)8月に盗まれた、葛城修験の重要な行場である中津川行者堂の本尊像です。翌年4月に窃盗犯が逮捕され、その後の捜査で所在場所が確認されて取り戻されました。しかし、同時に盗まれた、行者像に付属する前鬼と後鬼の2体についてはインターネットオークションで取引された痕跡が確認されましたが、その後の所在は不明となっています。

 愛染明王立像 

円福寺蔵
江戸時代


平成22年(2010)10月に、円福寺で盗難被害を受けた11体の仏像のうちの1体です。平成25年(2013)2月に発行されたオークションカタログに他の2体とともに掲載されていることを把握し、取り戻されました。防犯対策のため、仏像本体(左側)は博物館で保管し、現地には和歌山県立和歌山工業高等学校と連携して作製した「お身代わり」の3Dプリンター製の複製(右側)を安置しています。

 阿弥陀如来坐像 

和歌山県立博物館保管
平安時代



 平成22年(2010)~23年にかけて和歌山で発生した、文化財盗難事件の被害資料の一つです。平安時代、10世紀末ごろの作風を示す優れた出来映えの仏像ですが、どこから盗まれた仏像であるのか、現在も判明していません。和歌山県立博物館では、同様の盗難被害資料40点を管理し、所蔵者の把握に努めています(現在までに3点の所蔵者が発見されています)。

 

特別陳列 初公開・粉河寺の千手観音立像―粉河の名宝とともに―

 千手観音立像

粉河寺蔵
平安時代
初公開


 粉河寺本堂の後戸に安置されてきた、等身大の千手観音立像です。穏和な表情や、抑揚の控えめな肉身表現など、平安時代後期、12世紀ごろの特徴を示しています。脇手は江戸時代の後補ですが、全ての手のひらに玉眼が施された入念の作りです。粉河寺縁起絵巻(国宝)が作製されたのと同じころに、都の仏師によって造像された仏像であり、粉河寺の歴史を考える上で貴重な新資料となりうるものです。特別陳列での展示ののち、解体修理が施される予定です。

 剣 富田宗兵衛安定作

熊野神社蔵
江戸時代・寛永21年(1644)
研磨後初公開


 紀の川市中津川の山中に鎮座する熊野神社に伝わる剣です。粉河寺境内に隣接する粉河地区の産土神社の祭礼である粉河祭の際に、神殿護衛のために中津川から祢宜16人が渡り奉仕する際に所持したもので、修験道と深く関わる同地域を象徴する文化財です。茎銘に「寛永廿一年極月廿八日 奉打富田宗兵衛安定造之/大日本国補陀落山粉河寺丹生大明神御剣」とあり、のちに大和守を名乗る名工安定の、初期の作品と判明します。これまで全体が厚い錆で覆われていましたが、このたび研磨され、本来の輝きを取り戻しました。