主な出陳品の紹介

 和歌山県指定文化財
      東照宮縁起絵巻  第五巻   住吉広通筆     1巻  
         紙本著色  正保3年(1646)   紀州東照宮蔵 

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  徳川家康の一代記と東照社の由来を絵巻にしたもの。
 日光東照社に奉納された絵巻(狩野探幽筆、重要文化財)を
 参考にして制作されたが、第五巻の最後にある紀州東照宮の
 造営と和歌祭の部分はオリジナルである。作者は住吉広通
 (1599〜1670)で、正保2年の家康30回忌の和歌祭を描いた
 ものとされる。
  絵巻では、まず御旅所での読経や諸芸能(田楽・舞楽・相撲)
 奉納の場面が描かれ、次に御旅所に向かう渡御行列が描か
 れている。


      和歌御祭礼図屏風              6曲1双              紙本著色     寛文5年(1665)     海善寺蔵

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  東照宮から御旅所に向かう和歌祭の行列を中心に据えなが
 ら、周辺の景観についても詳細に描く。 行列にみえる人形浄
 瑠璃座の一行から、寛文5年の和歌祭を描いたものとされ
 ている。
  和歌祭はこの年を最後に縮小された。縮小前の和歌祭を懐
 古的に描いた絵画資料はいくつかあるが、この屏風は実見して
 描かれたものと考えられ、資料的価値は高い。伝来から、町方
 (特に湊)が制作に関与していた可能性を指摘できる。


       東紀州和歌御祭礼絵巻                  3巻                  紙本著色   江戸時代前期〜中期  個人蔵

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  寛文5年(1665)以前の和歌祭の行列を描いた絵巻。
 江戸時代前期の服装の文様や風俗の描写がみられ、鹿角の
 兜をつけた雑賀踊、大母衣、山車(草刈)などの練り物も描かれ
 ている。ただ、現状ではかなりの錯簡や欠損がある。展覧会に
 伴う事前調査で、同じ図様の絵巻が4種類あることが確認でき
 た。 そのなかで、この絵巻は最も早い時期に制作されたもの
 で、躍動感にあふれた人物描写や緻密な風俗描写が特徴で
 ある。
  初公開の資料。


      御召万歳丸絵図  須藤久甫筆       1巻                   紙本著色     天保13年(1842)   個人蔵

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  紀伊藩主専用の海御座船(御召船)として、享保2年(1717)に
 造られた万歳丸を15分の1の縮尺で描いた絵図である。
  海御座船は、もともとは軍事的な目的で造られたが、やがて
 藩主の移動手段として使われるようになった。付属文書には、
 熊野に入峰するため立ち寄った聖護院宮の御用船となった万
 歳丸の絵図を、聖護院宮が所望したことから、制作したと記さ
 れている。
  作者は藩のお抱え絵師・須藤久甫(1789〜?)である。


       面掛使用仮面  能面 大飛出     1面                        桃山〜江戸時代  紀州東照宮蔵

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  和歌祭には、仮面や頭巾を付けた面掛、面被、百面と呼ば
 れる練り物があった。 この面掛で使用された仮面の1つが、
 この能面(大飛出)である。
  面裏には、紀伊徳川家とつながりのあった面打の出目法眼
 元理栄満(弟子出目家初代、?〜1705)が、伝説的な面打で
 ある赤鶴の作と判断した鑑定銘がある。
  栄満の活躍期からみて、この面は元和8年(1622)に和歌祭
 が開始されて以降に収集され、和歌祭に使用されるように
 なったとみられる。


       和歌祭礼用舞楽装束 常装束 半臂  1領                         江戸時代前期  紀州東照宮蔵

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  常装束とは、舞楽で舞人および楽人が着る最も一般的な
 装束である。その一つが半臂で、袍と下襲の間に着用する
 袖のない胴衣である。紺地で、上半部に三重襷と桐・竹・鳳凰
 などの文様を刺繍し、襟や袖口を錦の裂で飾っている。
  襟などの錦の地や三重襷の刺繍が赤色のものが左方の
 半臂で、錦が萌黄地で、三重襷の刺繍が黄色のものが右方
 の半臂である。
  この半臂は、大阪・四天王寺に残る慶長4年(1599)頃ごろ
 制作のものに近い。


      芦辺団扇 岩瀬広隆原画                1面           版本色刷 江戸時代後期  和歌山県立博物館蔵

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   和歌浦に生育した芦の茎が使用された芦辺団扇で、扇面
 に和歌祭の様子を描く。
   紀伊国名所図会の挿絵を担当するために京都から招かれ
 た、大和絵師の岩瀬広隆(1808〜77)の原画をもとに制作さ
 れた。
   この団扇の上部に布引沖に碇泊する数艘の関船と嘉永
 四年(1851)に竣工した不老橋を描く。また、下部には御旅所
 にある鳥居に到着した行列(先頭は裃を着た根来者)とそれ
 を上覧する藩主や家臣たちを描く。