和歌山県内には数多くの古い仮面が残されていることをご存じでしょうか。高野山周辺では、仏教的な儀礼で使用された仮面や、神社の祭礼の際に使用された猿楽面などが残されています。はるか中世の時代に製作され、これまでその存在がほとんど知られていなかった仮面群は、地域がたどった歴史を考える上で貴重な資料となるものです。また江戸時代に和歌山を治めた紀伊徳川家ゆかりの能面もその一部が今日まで伝わっていることが分かってきました。徳川家康をまつる紀州東照宮の祭礼・和歌祭行列のうちの百面(面掛)で使用される仮面群も、中世の仮面が多数含まれていることなど、このたびはじめて全貌が明らかになりました。
仮面は、かつて盛んに行われていたさまざまな芸能の様子とそのにぎわい、人々の息づかいを今に伝えてくれる貴重な文化財です。この特別展では、自由な造形のものから洗練された様式美を見せるものまで、仮面の持つさまざまな魅力に触れていただき、あわせてそれらを守り伝えてきた地域の深い歴史を感じ取っていただきたいと思います。 |