平成19年 4月28日(土)6月10日(日)

文人墨客
―きのくにをめぐる―

 江戸時代、紀伊徳川家が支配した「きのくに」は、文化の一大拠点として、多くの文人を輩出し、様々な墨客が訪れました。文人とは、漢詩文などの知識を持ち、中国にあこがれを抱いた文化人のことで、墨客とは広く書画をたしなむ人々のことです。彼ら文人墨客は、そうした中国の教養に基づく詩文を出版したり、書を揮毫したり、あるいは絵を描いたりしました。

 きのくにを代表する文人である祇園南海や桑山玉洲は、全国的にもよく知られていたため、池大雅や木村蒹葭堂などの有名な文人たちも、彼らを訪ねてきのくにを目指しています。また、長沢芦雪は師である円山応挙の代わりに紀南の寺院を訪れ、多くの作品を描きました。このように、きのくにが多様な文人墨客をひきつけた背景には、紀伊半島が海上交通の要所であった点や、那智滝や和歌浦などの名勝に恵まれていた点が挙げられます。さらに、文化に造詣の深い紀伊藩主の徳川治宝・斉順が文人や陶工を呼び寄せた点も見逃せません。まさに、きのくにの豊かな自然と、そこに暮らす人々の思いが、文人たちの自由でのびのびとした表現を育んでいったとも言えるでしょう。

 この特別展では、主に江戸時代の中期以降に活躍した、きのくにゆかりの文人墨客を取り上げ、彼らの作品や交流を通して、輝かしいきのくにの文化を紹介します。


展示のみどころ
きのくにに惹かれた文人たち!


南海が描いた唯一の美人図

 祇園南海は日本を代表する文人画家で、その最初期に活躍したトップ3の一人。紀伊藩士の子として生まれ、のちに紀伊藩の儒学者になった。今回の特別展では、美人読書図と峰下鹿群図を初公開!美人読書図は現存する南海唯一の美人図。峰下鹿群図は、もとになった中国の絵とあわせて展示。

 芦雪が紀州で最後に描いた

 長沢芦雪は京都の有名な画家である円山応挙の高弟。応挙の代わりに紀南の寺院を訪れて多くの作品を描いた。芦雪が紀州で最後に滞在したのが、田辺の高山寺。そこに残る寒山拾得図は即興的に描かれた大作。大胆な筆さばきで描かれた寒山は、紀州に別れを告げるかのようだ。

 応挙の金の襖

 師匠である応挙の代わりに紀南を訪れた芦雪は、京都からいくつか応挙の作品を持ってきた。その一つが白浜の草堂寺に残る「松月図襖」。床の間の違棚の上にある小さな襖だが、金箔の上に描かれて美しい。天明5年(1785)という制作年代が書かれているのも重要である。

 可愛い犬の親子 襖の中で遊ぶ

 芦雪は動物に優しいまなざしを向け、いかにも可愛らしい動物の絵を描いたことでも知られる。古座の成就寺にある花鳥群狗図襖は、その中でも名品。襖の中で13匹の親犬・子犬がじゃれ合って遊んでいる。真ん中の母犬は優しそう。右側のツツジにとまっている小鳥も忘れずに。

 油絵 オブ 雑賀崎

 司馬江漢は日本ではじめて銅版画を描いた西洋かぶれの画家。主に江戸で活躍したが、先祖が紀州の出身だった。そんな縁で一度紀州を旅行して、いくつかスケッチを残した。そのスケッチを元に描いたのが紀州雑賀崎浦図。江戸時代には珍しく油絵で描かれており、サインもローマ字で綴っている。

 文豪・川端康成も絶賛

 京都の陶工として有名だった青木木米は、紀伊藩の10代目の藩主である徳川治宝に招かれ、紀州を訪れた。瑞芝焼という紀州のやきものを指導したとも伝えられる。その木米が描いた聴濤図。木米の絵は現存例が少なく、とても貴重。実は、文豪・川端康成もこの絵見て、名品だと箱書をしている。

目  録

コ ラ ム


和歌山県立博物館では、平成19年5月13日(日)に和歌山市和歌浦周辺で行われる「和歌祭」にあわせて、
関連イベントを開催します。


図 録 発 売 中!

文人墨―きのくにをめぐる―

きのくに文人完全ガイド

これであなたも文人になれる。
江戸時代の文人たちときのくにの旅へ出発!!

●すべての展示資料の写真をその詳しい解説を掲載。
●展示資料に書かれてる題や賛などの文字情報をすべて解読。
●画家のサイン(署名)やハンコ(印章)などの写真も掲載。
●詳しい関連年表あり。

図録の郵送購入については、こちらをご覧ください。→

一冊 600円
1,200円


ミュージアム・トークのお知らせ

当館企画展示室内において、ミュージアム・トーク(展示解説)を開催致します。
申込は不要となっておりますので、是非ご参加下さい。

当日、時間までに受付に集合して下さい。

4月29日(日・祝)、5月20日(日)、6月10日(日)
 いずれも、14時〜15時

 ※会期中に大幅な展示替えをおこないます。
     前期:4月28日〜5月20日 
      後期:5月22日〜6月10日

   。。。詳細は、目録をご覧下さい。。。

 

講演会・講座のお知らせ

◆講演会「きのくに文人交遊録
 日時 5月4日(金・祝) 13時30分〜15時
 講師 安永拓世(当館学芸員)

◆博物館講座(「国際博物館の日」記念行事)
 「偉大なる文人 祇園南海
   ―新出画の紹介とその史的位置―」
 日時 5月27日(日) 13時30分〜15時
 講師 安永拓世(当館学芸員)

 いずれも会場は、県立近代美術館
           (博物館となり)2階ホール


▼休館日

月曜日
ただし、4月30日は開館
し、
翌5月1日は休館。

開館時間

9時30分〜17時
入館は16時30分まで


入 館 料

 

一  般

500円 (400円)

大学生

300円 (250円)

  ※( )内は20名以上の団体料金。
 ※高校生以下・65歳以上の方・障害者の方、および
   県内に在学中の外国人留学生・外国人就学生は無料。
 

芦雪も、応挙も、南海も!