数多くの貴重な典籍(書物)を複製している尊経閣叢刊の中には、紀州(和歌山県)の歴史に関わりのある資料がいくつもふくまれています。 たとえば、『古語拾遺』や『古事記』には日前宮や紀国造の話がありますし、『日本霊異記』では、紀州出身の僧・景戒が紀州を舞台とした説話を作っています。『古今集』や『新古今集』には、紀州の地名を歌枕とした和歌がのっており、『性霊集』と『金剛童子法』は、高野山を開いた空海に関わる資料です。『中外抄』には根来寺を開いた覚鑁のこと、『楠木合戦注文』には中世前期に紀北に勢力を持っていた湯浅党の武士の名前がみられます。このほかにも、紀州に関わる資料があります。 このことは、たまたま尊経閣叢刊の中で生じたことではなく、紀州が日本の歴史・文化の上で重要な役割を持っていたことを、象徴的にあらわしているのでしょう。 当館学芸課長 竹中康彦
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